①展覧会概要
2025年9月20日(土)から2026年2月1日(日)まで、神戸市立博物館にて「阪神・淡路大震災30年 大ゴッホ展 夜のカフェテラス」が開催されます。震災から30年という節目に、芸術の力を通じて「希望と再生」を伝える大規模な展覧会です。
会場には、オランダのクレラー=ミュラー美術館所蔵の選りすぐりの作品が集結し、なかでもゴッホがゴーギャンと同じアルルで過ごした時期(1888年)の傑作「夜のカフェテラス」が20年ぶりに来日となり、大きな注目を集めています。
②クレラー=ミュラー美術館と開催の背景
オランダ・ヘルダーラント州のクレラー=ミュラー美術館は、実業家アントン・クレラー・ミュラーとその夫人ヘレンのコレクションを基に1938年に開設されました。ゴッホ作品の世界有数のコレクションで知られ、約87点の油彩画と180点以上の素描作品を所蔵しています。これはオランダ・アムステルダムのゴッホ美術館(約200点の油彩画と500点以上の版画や素描作品を所蔵)に次ぐ世界第2位の所蔵数であり、本展ではその中から約60点が展示されます。
さらに印象派を代表するモネやルノワールの作品も加わり、ゴッホの時代を立体的に理解できる構成となっています。
この展覧会を震災から30年を迎える神戸で開催することは、「苦難を抱えつつも芸術に希望を託したゴッホ」と「災害から再生した街・神戸」を重ね合わせる象徴的な意味を持っています。
③見どころ・作品紹介
本展の展示は、ゴッホの画家としての歩みを3つの章で紹介します。初期から成熟期までを時代順に追うことで、画風の変化を実感できる構成となっています。
1. バルビゾン派・ハーグ派との出会い
19世紀半ばに写実風景画に取り組んだミレーらのバルビゾン派や、イスラエルスらハーグ派の影響を強く受けたゴッホは、農民や労働者の姿を真摯に描きました。彼にとって「人間の尊厳」や「自然との共生」は初期から一貫したテーマであり、「ジャガイモを食べる人々」The Potato Eaters,1885年(ゴッホ美術館蔵)に代表されるように、暗い色調の中に力強い精神性を表現しています。
2. オランダ時代の素描と油彩
オランダ時代のゴッホは、ひたすら基礎を磨き続けました。「石膏像のある静物」(下記参照)などは一見地味ですが、人体や形態の把握を徹底的に鍛える修練の成果です。この努力がのちに独自の線や構図感覚を生み出し、色彩の爆発的な表現へとつながっていきます。
3. パリからアルルへの道程
1886年にパリに出たゴッホは、印象派や新印象派と出会い、画風を大きく転換しました。スーラやシニャックの点描法、モネやルノワールの明るい色彩から学んだ経験は、彼に「光と色彩」の自由を与えます。その後アルルへ移り住み、「夜のカフェテラス」「レストランの室内」「自画像」(いずれも下記参照)など、鮮烈な色彩と個性的な筆致によって「ゴッホらしさ」が確立されました。まさに画家としての頂点に向かう道程であり、同時にゴーギャンとの交流や心の葛藤が渦巻いた時期でもあります。
!!会場で5作品が写真撮影可能!!
さらに、会場に展示されるゴッホの以下の5点の代表作の撮影も可能です。また土日祝は日時指定の予約優先制が導入されているため、事前予約をしておくと安心です。
1.「夜のカフェテラス(フォルム広場)」Café Terrace at Night (Place du Forum), 1888年(クレラー=ミュラー美術館蔵) 画像:Wikimedia Commons(Public Domain)
2.「自画像」Self-Portrait, 1887年(クレラー=ミュラー美術館蔵) 画像:Wikimedia Commons(Public Domain)
3.「石膏像のある静物」Still Life with Plaster Statuette, 1887年(クレラー=ミュラー美術館蔵) 画像:Wikimedia Commons(Public Domain)
4.「レストランの室内」Interior of a Restaurant, 1887年(クレラー=ミュラー美術館蔵) 画像:Wikimedia Commons(Public Domain)
5. 「草地」Meadow, 1887年(クレラー=ミュラー美術館蔵) 画像:Wikimedia Commons(Public Domain)
SNSでも話題になりそうな、貴重な撮影のチャンスとなると思います。
④まとめ
「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」は、単なる回顧展ではなく、震災から30年というこの地域の記憶を重ね合わせた特別な意味を持つ展覧会です。困難を抱えながらも創作に打ち込み、絵画の中に希望を託したゴッホの姿は、現代を生きる私たちにとっても強い励ましになるでしょう。
神戸から始まるこの展覧会は、今後福島・東京へと巡回し、全国の人々に芸術の力を伝えていきます。また2027年の第2期開催では、「アルルの跳ね橋」などさらなる傑作の来日も予定されています。
なお、ゴッホ家のファミリー・コレクションに焦点を当てた展覧会「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」については、別記事で詳しく解説しています。
家族に守られたゴッホとコレクターが選び抜いたゴッホ。
この二つを読み比べると、今回の夜カフェ展がより深く感じられると思います。
→ ゴッホ展(大阪・東京・名古屋)~ 家族がつないだ画家の夢 ~ 鑑賞記はこちら
また、両展覧会を2025年からの特別な出来事として俯瞰したコラム記事もあります。
ゴッホの評価がどのように築かれ、なぜ今年が異例のタイミングなのか——その背景を整理した内容です。
→ 二つのゴッホ物語|家族が守ったゴッホと、コレクターが賭けたゴッホはこちら
皆さん、この機会をぜひお見逃しなく。
コラム:神戸市立博物館「ミュージアムカード」
神戸市立博物館には、いわゆる年間パス「ミュージアムカード」があります。これを利用すると発行日から一年間の有効期限内であれば特別展であっても何度でも入場可能になるため非常にお得です。一般3000円、大学生1500円で発行日から1年間有効のため、このゴッホ展を複数回楽しみたい方、あるいは神戸市立博物館をよく訪れる方には特におすすめです。
【関連ページ】
(大阪・東京・名古屋)ゴッホ展 ~ 家族がつないだ画家の夢 ~ 鑑賞記
【展覧会情報】
阪神・淡路大震災30年 大ゴッホ展 夜のカフェテラス(公式サイト)(神戸展サイト)
会期:2025年9月20日(土)〜2026年2月1日(日)
会場:神戸市立博物館
開館時間:9:30 〜 17:30(金・土は20:00まで)土日祝は日時指定の予約優先制
休館日:月曜(祝日の場合は翌平日休)、12/30〜1/1
観覧料:一般 2,500円(前売 2,300円)、大学生 1,250円(前売 1,150円)、高校生以下無料
巡回情報:福島県立美術館(福島) 2026年2月21日(土)~ 2026年5月10日(日)
上野の森美術館(東京) 2026年5月29日(金)~ 2026年8月12日(水)


