SOMPO美術館の開館50周年を記念して、展覧会「モダンアートの街・新宿」が開催されます。会期は2026年1月10日から2月15日まで、会場は新宿のSOMPO美術館です。
本展は、日本の近代美術史において重要な場所であった「新宿」をテーマとしており、ここにゆかりのあった芸術家たちの歩みを紹介する企画として案内されています。
近代文化を育てた街・新宿
新宿は、明治末期以降、都市の拡張とともに人と情報が集まりやすい環境が整い、芸術家や文化人が行き交う場となってきました。住居やアトリエ、喫茶店や商業施設などが近接する土地柄は、分野や世代を越えた交流を生みやすく、文学や美術、音楽など多様な表現活動が並行して育まれていきます。
新宿の中落合やその近辺(目白・中井など)には、近代以降、画家や文学者など多くの文化人が暮らし、目白文化村や落合文士村と呼ばれる文化的な集積が形成されました。また、新宿に隣接する池袋周辺にも1930年代を中心に芸術家が集まり、各地にアトリエ村が生まれ、「池袋モンパルナス」と総称されています。こうした環境の重なりの中で、新宿は創作と生活が重なり合う場として、近代日本の文化を支える役割を担ってきました。
展覧会が描く、新宿と近代美術の半世紀
新宿は明治末期以降、新進的な芸術家が集い、また新宿に生きる芸術家が別の芸術家を呼び込みながら、近代美術の拠点の一つとなっていった場所とされています。本展は、そのような新宿の歴史的背景を軸に、明治末期から戦後初期を中心に、新宿ゆかりの芸術家たちの軌跡をたどるものとして構成されています。
展示では、中村彝や岸田劉生、佐伯祐三といった洋画家に加え、版画家や詩人、彫刻家の作品や資料も紹介されており、絵画にとどまらない表現の広がりを確認することができます。また、戦後以降の動向や美術館の収蔵品を紹介するパートも設けられており、新宿という街と美術の関係を、時間軸に沿って整理する展覧会として案内されています。
新宿で活動した芸術家たち
公式サイトには複数の作家が挙げられていますが、展覧会の流れを事前に把握するための導線として、ここでは五人の作家を紹介したいと思います。
中村彝
中村 彝(1887年~1924年)は、明治末期から大正期にかけて活動した洋画家で、油彩による人物像や静物を制作しました。本展では新宿にゆかりのある芸術家の一人として紹介されています。
主な展示作品には『頭蓋骨を持てる自画像』(1923年、大原美術館)と『牛乳瓶のある静物』(1912年頃、中村屋)の二点が紹介されています。1910年代には新宿中村屋裏のアトリエで制作したことも知られ、新宿の文化的な場と接点をもった作家であり、また下落合に居を構えていました。現在、その住居は「新宿区立中村彝アトリエ記念館」として保存・公開されています。
(画像:頭蓋骨を持てる自画像、Self-Portrait with a Skull (1923), Nakamura Tsune, Public Domain.)
岸田劉生
岸田 劉生(1891年~1929年)は、明治末期から昭和初期にかけて活動した洋画家で、自身の娘『麗子』を連作で描いたことでも知られています。1910年代に雑誌『白樺』同人たちとの交友が始まり、当時の東京府豊多摩郡大久保町(現・新宿区)へ転居した時期もあります。本展での展示作品として、『武者小路実篤像』(1914年、東京都現代美術館)が紹介されています。(画像:著者作成)
佐伯祐三
佐伯 祐三(1898年~1928年)は大正期から昭和初期にかけて活動した洋画家で、都市の建物や街角を題材に素早いタッチで描いた作品で知られます。日本とパリを行き来しながら制作を行った作家ではありますが、新宿とのゆかりも深く、大正期に落合(現・新宿区中落合)にアトリエ付き住宅を新築して活動していました。現在、その場所は「新宿区立佐伯祐三アトリエ記念館」として保存・公開されています。本展での展示作品として、『立てる自画像』(1924年、大阪中之島美術館)が紹介されています。(画像:Self-Portrait (Standing) (1924), Yūzō Saeki, Public Domain.)
松本竣介
松本 竣介(1912年~1948年)は昭和期に活動した洋画家で、新宿・下落合にアトリエ付きの住居(綜合工房)を構えました。文章や編集活動とも関わりながら制作を続け、随筆雑誌『雑記帳』の編集にも携わっています。本展での展示作品として、『N駅近く』(1940年、東京国立近代美術館)と『立てる像』(1942年、神奈川県立近代美術館)の二点が紹介されています。都市の風景や建物が主要なモチーフであったことが確認できます。(画像:N駅近く、Scene Near N Station, Shunsuke Matsumoto, Public Domain.)
東郷青児
東郷 青児(1897年~1978年)は昭和期を代表する洋画家の一人で、人物像を主題にした作品で広く知られています。本展での展示作品として、『黒い手袋』(1933年、SOMPO美術館所蔵)が紹介されています。
SOMPO美術館は1976年の開館当初「東郷青児美術館」としてスタートした沿革をもち、館のアイデンティティと作家名が重なる点でも、新宿という場所の美術館史と接続する作家として位置づけられます。(画像:著者作成)
このほか本展では、川上 澄生、木村 荘八、芥川(間所)紗織、清宮 質文らによる作品も紹介されており、油彩、版画、染色など技法の幅を通して、新宿における近代美術の多層的な広がりをうかがうことができます。
展覧会情報
開催場所:SOMPO美術館
住所:東京都新宿区西新宿1丁目26番1号
開館時間:10:00~18:00(金曜は20:00まで)※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜、1/13(ただし1/12は開館)
観覧料(税込):一般(26歳以上)1,500円/25歳以下1,100円/小中高校生無料


