①展覧会概要
2025年9月20日(土)から11月16日(日)まで、京都国立博物館の平成知新館にて、特別展「宋元仏画-蒼海を越えたほとけたち-」が開催されます。前期は9月20日〜10月19日、後期は10月21日〜11月16日と二期に分かれ、展示替えを行いながら紹介されます。
中国の宋・元時代に制作された仏画は「宋元仏画」と呼ばれ、写実性と精神性を兼ね備えた東洋美術の最高峰と位置づけられています。これらは千年近く前より大陸から海を越えて日本に伝来し、日本の寺院を中心に大切に守り伝えられてきました。本展はその精華を一堂に集めた、国内最大規模の宋元仏画展となります。
公式キャッチコピーは「蒼海を越えたほとけたち」。仏画がいかにして国境を越え、人々の祈りをつなぎ、日本文化の礎を形成したのかを感じることができる展覧会です。
②コレクション元・開催の背景
宋元仏画は、中国の宋(960年〜1279年)・元(1271年〜1368年)時代に制作された仏教絵画の総称です。北宋(960年~1127年)では宮廷画院による院体画の伝統を受け、精緻で格調高い仏画が多く生まれました。一方で南宋(1127年~1279年)・元代には、より抒情的で写意的なスタイルが台頭し、禅宗文化の広がりとともに日本へも多く請来されます。
宋元仏画は、鎌倉・室町時代の仏教美術に大きな影響を与えました。特に雪舟や長谷川等伯といった後世の巨匠たちが学んだ源泉が宋元仏画であり、単なる輸入美術としてではなく、日本美術の発展に深く関わり、根を張る存在です。
現在、宋元仏画の優品がまとまって残っている国家は世界的に見ても日本が中心であり、これは戦乱や文化財破壊を経た大陸においてはほとんど伝来されなかったため、日本の寺院や美術館が守り伝えてきた努力の賜物と言えます。
今回の展覧会は、そうした「世界的に見ても稀有な日本の所蔵状況」を背景に企画されました。
京都はかつて禅宗が栄えた地であり、南宋からの請来品が集中的にもたらされた都市でもあります。その京都で宋元仏画を総覧できる機会は、きわめて象徴的といえるでしょう。
③見どころ・章立て紹介
本展は、宋元仏画の魅力を多角的に紹介する構成となっています。
第1章 写実と荘厳 ― 北宋の仏画
北宋時代の仏画は、宮廷画院に所属した画家たちの手で制作されており、写実的で格調高い表現が特徴的です。たとえば国宝『孔雀明王像』(仁和寺蔵・前期展示)は、鮮やかな彩色と緻密な描線で知られ、孔雀の羽一枚一枚に至るまで徹底した写実が施されています。その荘厳で力強い姿は、北宋仏画の美質を象徴する傑作です。
第2章 祈りの浸透 ― 南宋の柔らかな筆致
南宋時代に入ると、仏画は次第に柔らかさと抒情性を増していきます。大徳寺所蔵の国宝『観音猿鶴図』(牧谿筆・後期展示)は、観音菩薩を中心に、猿と鶴という寓意的な動物が描かれた独特の作例です。禅宗の精神性を背景に、観音の慈悲と自然との調和を表現したもので、宋元仏画の新しい方向性を示しています。
第3章 日本に伝わる宋元仏画
日本に伝来した宋元仏画は、鎌倉時代以降の日本仏教美術の発展に決定的な役割を果たしました。『阿弥陀三尊像』(普悦筆・清浄華院蔵)や、『五百羅漢図』(林庭珪・周季常筆・大徳寺蔵)などがその代表です。これらは仏堂を飾る荘厳としてだけでなく、禅宗寺院の思想的背景を伝える教材的な役割も果たしました。
第4章 宋元仏画の受容と展開
宋元画の中で、とりわけ仏画の写実性や精神性は、雪舟や長谷川等伯といった後世の巨匠たちにも学ばれた源泉でした。雪舟はその写実的な造形感覚や構図を徹底的に研究し、水墨画の表現に新しい地平を切り拓き、また長谷川等伯は、仏画に込められた精神性を桃山文化の障壁画へと昇華させ、両名とも荘厳でありながら精神的な深みを持つ作品を生み出しました。
本展では、宋元仏画が日本美術へと与えた影響の大きさを振り返り、その歴史的な位置づけを再確認します。
★注目ポイント
・日本にしかまとまって残っていない宋元仏画を、過去最大規模で紹介。
・国宝・重要文化財を多数出品し、前期・後期で大幅に展示替えが行われます。
・雪舟・長谷川等伯など、日本美術史の巨匠たちが宋元仏画から受けた影響を体感できます。
・国際シンポジウムや記念講演会など、関連イベントも充実しています。
④まとめ
「宋元仏画-蒼海を越えたほとけたち-」は、千年前の中国で生まれた仏画が、日本で守られ、育まれ、今日まで受け継がれてきた歴史を体感できる展覧会です。
それは単に宗教美術の紹介にとどまらず、日本文化の根底に流れる「受容と創造」の精神を映し出しています。
東洋美術の最高峰を、秋の京都でじっくりと鑑賞できるこの機会は、世界的にも稀有です。仏教美術に関心がある方はもちろん、日本美術や東アジア文化の根を知りたい方にとっても必見といえるでしょう。ぜひ、この貴重な展覧会をお見逃しなく。
【展覧会情報】
特別展「宋元仏画 ─ 蒼海を越えたほとけたち」
会期:2025年9月20日(土)~2025年11月16日(日)
前期:2025年9月20日(土)~2025年10月19日(日)
後期:2025年10月21日(火)~2025年11月16日(日)
会場:京都国立博物館 平成知新館
開館時間:9:00~17:30(金曜は20:00まで、入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(10月13日、11月3日は開館、翌日休館)
観覧料:一般2,000円(前売1,800円)、大学生1,200円(前売1,000円)、高校生700円(前売500円)、中学生以下無料


