【洋画部門②】
〇小灘 一紀 (こなだ いっき) 理事
「悲嘆に暮れる多遅摩毛理」 F130
多遅摩毛理(田道間守、たじまもり)は、古事記・日本書紀に登場する人物で、時の天皇の命を受け、「非時香菓」(ときじくのかくのみ、不老不死の力を持つ果物で、現在では「橘」とされる)を求めて常世の国(海の彼方にあるとされる異世界)に派遣されました。この絵は、彼がその実を手にして帰国したものの、天皇はすでに崩御しており、「非時香菓」を捧げながら慟哭する場面を描いたものです。日本神話を題材としたこの作品は、人物の溢れる感情が見事に表現されており、その迫力は青木繁の「わだつみのいろこの宮」(1907年、重要文化財、アーティゾン美術館蔵)を彷彿とさせます。
その壮大さと情念の深さに圧倒される、見応えのある作品でした。
〇熊谷 有展 (くまがえ ありのぶ) 会員・審査員
「アムステルダムの朝」 F120
この作品は、19世紀末にジョルジュ・スーラらが確立した新印象主義の点描画法を彷彿とさせます。近くで見ると、それぞれ単色の点が寄り集まっているように見えるだけですが、少し距離を取って眺めると、視界の中でその単色の点が混ざり合い、意図された色や構図が浮かび上がり、また全体に引かれたグリッド線が画面を整え、秩序感を与えています。そして、画面の奥から光り輝く朝日が、霞みがかったアムステルダムの街並みを美しく照らし出し、幻想的な雰囲気を醸し出しています。
作家のことばに次のような文言がありました。「朝の光の中、新たな一日の始まりと共に、明日への希望、繫がりや絆の大切さを心に留めつつ、かけがえのない当たり前の日常を、悔いなく生きる。」当たり前に繰り返さる日常の瞬間を大切にしていきたいですね。
〇土肥 重夫 (どい しげお)
「樹海」
本作品は京都在住の作家さんの作品です。
苔むした樹海の情景を切り取ったこの作品は、画面全体のタッチが右上から左下へと流れるように構成されています。部分的に近づいて見ると、太く粗削りな線が描かれており、幾何学的・抽象的な印象も受けます。しかし、タッチの方向が統一されているため、全体として一貫した調和を感じさせます。光の当たる部分には鮮やかな「緑」、影の部分には深い「黒」が用いられ、さらに樹皮が剥がれた箇所には「茶」や「薄いピンク」が施されることで、画面にアクセントが加えられています。
このように、風景を描写する中に繊細で多様な模様がちりばめられており、見る者に心地よいリズム感を与える作品です。


