京都府宇治市にある京都芸術高校の卒業制作展に行きました。この高校は美術専門の高校であり、卒業制作展では、絵画分野の絵画表現コースとマンガ文化表現コース、立体分野の造形表現コース、デザイン分野の視覚デザイン表現コースと映像メディアデザイン表現コースの5つのコースに分かれて展示されていました。この展覧会全体のテーマとして「question」というキーワードが設定されているようで、それに沿った作品を制作されていました。絵画表現コースの出展作品を紹介します。

宇治市長賞 受賞作品 「山なる臓」
まずこの山の描写力に注目してください。作者は長野の山を見た際に感じた、「自然の力強さによる恐怖と圧迫感」を表現したとのこと。この急峻な姿を見せる山稜は神々しく、また厳しく我々に何か問いかけてくるように感じます。そのような圧倒的な存在の前では我々は無力であり、大いなる畏怖の念を抱かずにはいられない。そんな気持ちを抱かせてくれる作品です。

「午前十一時の温室」
熱帯植物の鮮やかな色彩に興味を持った作者は、実際に植物園の温室に行き、観察して描いたとのこと。コラージュ表現で複数の場面が配置されていることや、ところどころに文字が書かれているていることで、植物図鑑をワクワクしながら眺めているような気持ちにさせてくれる作品です。

「Be myself」
地平線で画面が大きく分割され、上部は空の鮮やかな青色と太陽の眩しい光、下部は一面オレンジ色の花に覆われた大地であり、画面全体が補色の効果で色彩の美しさが際立っています。地上の風景と思いきや魚が泳いでいる。ここはどこなのだろう…?不思議な感覚を得た作品でした。

「柳巷花街」
月が照らす暗闇の中で赤くほんのりと灯る中国提灯の光が花街を幻想的に映し出しています。あの建物の中で多くの人が宴会を楽しんでいるのでしょうか?中国提灯の光に魅せられて、たくさんの想像を掻き立ててくれる作品です。
どの学生さんも一人一人が自身の興味を探求して作品制作に取り組まれ、オリジナリティ溢れる作品を制作されていたことに驚きました。素晴らしい作品を鑑賞させていただき、ありがとうございました。この学校を卒業された後も、いつまでもアートを好きでいていただければうれしいです。卒業まであと少しの期間ですが、残りの学生生活を楽しんでください。