再興第109回 院展 彩やかな日本画の饗宴①

公益財団法人日本美術院が主催する日本画の公募展、「院展」の京都会場(2025/1/28~ 2/2)を紹介します。京都会場では受賞作や関西にゆかりのある作品87点が展示されていました。彩やかな日本画の饗宴をお楽しみください。

 

【内閣総理大臣賞】 「博物学」 同人 前田 力

霞のかかる室内でしょうか。恐竜やウマ、古代の植物、ヨットなどが画面に浮き上がる幻想的な空間。そこは博物館か…それともそれを探求する者の思考の中か…。あらゆる事象を学ぶ博物学を象徴するかのような作品です。

 

【東京都知事賞】【日本美術院賞(大観賞)】
「井の頭(11)―樹下生生―」 樋田 礼子

水しぶきを黄色の線で表現しており、まるで花が水面を覆いつくしているよう。その黄色と水面の青色が補色になっているためか、強烈に視線を引き付けてくれます。葉の部分は金属箔一枚のブロックごとに異なる色彩で彩色し、グラデーションを表現しています。作者の言う「きとし生けるものの命の輝き、生命の循環」を感じさせる作品です。

 

【日本美術院賞(大観賞)】 「算」 川﨑 麻央

川中島の戦いにおいて、戦略を練る武田信玄。顔が黒く表現されているので、不気味な印象が残ります。鬼面の付いた兜は「諏訪法性兜(すわほっしょうのかぶと)」。彼のトレードマークです。ヤクの毛でできた白熊(はぐま)飾りは背景と同化しており、その周りの空気表現は彼をつつむ気迫や威厳を醸し出しているように感じました。

 

【初入選】 「刻々と」 吉岡 昌子 

時刻を刻む時計、それを動かす歯車が霞んだ背景に浮かび上がります…一見すると夢の中にいるような感覚。時間がすべてを刻々と変化させていく…白く繊細に咲いている花も何もかも…

 

【初入選】 「Adam and Eve」 張 豪峰

エデンの園に住むアダムとイヴ。背後に実るのは知恵の実でしょうか?イヴの手にも握られており、背後の樹に絡みつく蛇もこちらに視線を向けています。絡み合う木の根はこれから待ち受ける二人の困難な運命を感じさせます。

 

「神の化身」 廣瀨 貴洋

コモドドラゴンに牡鹿、鶏がおり、その上に金色でインドの神鳥「ガルーダ」が描かれており、共に神の使い、あるいは神の化身とされている生物たちです。これ以外にも背景には無数の羽が描かれており、もしかしたらこれ以外の「何か」が隠れているかもしれません…

 

「雨情」 秦 誠

厚い雲に覆われ、強い雨が降る悪天候の中、鉄道橋を渡る電車。強い雨に照らされるライトの光を見ていると、どことなく物悲しくなるのは私だけでしょうか?電車は今日も多くの人のさまざまな想いを乗せて走っていきます。

再興第109回 院展 彩やかな日本画の饗宴②に続きます。)