「生誕140年 YUMEJI展 ~大正浪漫と新しい世界~」が大阪のあべのハルカス美術館で開催されています。主に岡山県瀬戸内市にある「夢二郷土美術館」の所蔵作品を中心に180点の作品がこの展覧会に出品されており、現存数が少ない油彩画も14点含まれています(現存数約30点)。ここでは彼の代表作品を紹介したいと思います。

(竹久夢二の肖像)
私自身、夢二の作品の実物を鑑賞するのはこれが初めてでした。当初から彼のイメージとして持っていたものは、独特な雰囲気を醸し出している「夢二式美人」の肖像で、どこか近づき難く苦手に感じていました。そんな中で会場に入ってまず迎えてくれたのは、この作品でした。
タイトルは「林檎」。1914年の日本画作品で、彼の初期代表作です。面長で色白、大きな瞳、しなやかな手先が特徴的な女性が林檎の樹の下で、ポーズを取っています。その頬にはうっすらと赤みがさし、うれしそうな、照れているような表情を見ることのできる作品です。

次の作品はこの展覧会の目玉である「アマリリス」。1919年に描かれた作品で、現存する希少な油彩画のひとつです。夢二が長期逗留していた菊富士ホテル(東京都文京区本郷、1945年3月の東京大空襲で焼失)を去る際にオーナーに贈りました。長らく行方不明となっていましたが、近年再発見されました。タイトルになっている「アマリリス」の花は大きく描かれ、それが女性の日本髪に付けた髪飾りのようにも見えます。また「アマリリスの赤」「女性の襟元、手元の赤」「女性の手先の輪郭線の赤」「植木鉢の茶」と画面が暖色で構成されており、温かみを感じます。「林檎」に描かれた女性と比べると、その表情はどことなく「凛」とした強い意志を感じ、西洋的なモチーフですが、着物姿で日本髪の女性を描くことで、彼の表現する「大正ロマン」を強く感じさせる作品です。

この作品は「秋のいこい」。落ち葉が舞い散るベンチで女性が佇んでいます。 田舎から仕事を求めて出てきたのでしょうか。または仕事を無くし、行く場所がないのでしょうか。どこか寂しそうな視線をこちらに向けています。この絵画が描かれた1920年頃は第一次世界大戦における特需も終わり、景気が停滞している時期に当たります。そういった世相もこの散りゆく落ち葉が舞う寒々しい情景の中に反映させているように感じます。

この作品も近年、アメリカで再発見されました。作品名「西海岸の裸婦」(1931年~1932年)。夢二が渡米時にロサンゼルスで世話になった写真家の宮武東洋のもとに残したもの。金髪の外国人女性の裸婦を描いた油彩作品はこの1点のみです。大きな瞳に少し不安そうな表情、透き通るような柔らかい白い肌と髪の毛の対比的な表現、身体に並行した紺・緑・黄のストライプのデザイン的な背景などが印象に残る作品です。
この展覧会を通して、大正ロマンの雰囲気を楽しむことができ、竹久夢二の魅力を改めて認識することができました。油絵の他にも彼のデザインした千代紙や雑誌の表紙絵、挿絵なども展示されているので、ぜひご覧ください。




(夢二が経営する港屋絵草子紙店で販売していた千代紙)
以上、紹介した作品はすべて夢二郷土美術館の所蔵。
音声ガイド:なし
作品撮影:特定の作品で可能
図録:2900円(レターブック付き 4500円)
あべのハルカス美術館
生誕140年 YUMEJI展
~大正浪漫と新しい世界~
2025年1月18日(土)~ 3月16日(日)
~会期中無休~


